「衣食住」

ここ数年の環境の変化により「衣食住」が気になっていた。

Stay homeになりよりお家を豊かにしていく一方で虐待が起きてもおかしくないような住環境だったり、篭るからこそ、守るべきものが守れなくなり、隠せちゃう住環境であることを身に沁みるここ数年。

ファッションも生きていくためにはひとまずは必要ないとなり、生活必需品の枠には入らなかったけど、なぜじゃあ衣食住の一番最初の文字が「衣」なんだろう?
(ファッションが元気じゃないと、やっぱり心も潤わない)

食べ物よりも全然生活必要じゃない贅沢品だと思っていた植物やお花が
心の栄養として必要不可欠だと、ヨーロッパ諸国では「生活必需品」と認定されていると知った時期でもある。

食が体を作るエネルギーであるならば、草花は心を潤すエネルギーであることは、
コロナ渦で強いられた今の生活だったからこそ気づいた宝物。

と同時に、日本という国に自信が持てなくなった、もうだめだなあと思うことが、諦めに近い嫌になってしまうことが多くなった昨今。ちょっと前までだったら、「なに人ですか?」と聞かれて、自信満々に「Japanese」と答えていた自分が嘘みたい。

今は、「東京から来た」と都外に行った時に伝えるのも、「品川ナンバーな車であること」も、「日本人です」と答えることも、私的には自信が前よりなくなってしまったところがある。

というか、そういう枠ではない域にいける時期。いかないとやばい時代。
国とか、年齢とか、性別とか、どこどこ出身とか、どこどこ卒とか、どこの会社勤務とかそういうことではなくて。でも、失うものは何もないくらい全て失ったからこそ、訪れたチャンスの時期。

そんな時に、久しぶりに再会した吉田さんの語る大麻布の歴史の話に付随する、日本の昔話には、日本の衣食住の魅力がたっぷり詰まっていて、光を、自信を持てるような、そんな過去がたっぷり詰まっていました。

大事なのは、何かを非難したり壊したりすることで新しい何かを作り上げることよりも、
すでに元々あるものや、事実を掘り下げ、そこをうまく引き上げていい感じにマスタリングすること。
過去に学び未来を積み上げていけるくらいの、先人の知恵は土の下に、植物に、あったということ。
食と植物に関わっているからこそ感じる、それらの大切さを、大麻布を通して、感じてもらえたら、これから変わっていかないといけない国だからこそ、壊さず創り上げていける未来は、何気に自分たちの国の過去に、十分にあったなあと。

今までは、育て上げた”成果物”としての”お花”や”野菜”を見て、ああだこうだと生きてきた私たちは、今畑を自分でしたくなったり、収穫したくなったり、とにかくその成果物になる前の過程と、そのあとのことも考えようとしている価値観になってきたと思う。
その全体像を見ていくと、結果、生きていくために必要だと言われる衣食住は全て植物から、そして土から来てて、土に還っていっているのであって、そこの過程に生きていて、未来を作る途中にいる役目であることを認識できる今だから気づけた感覚。

今回の展示は、衣食住の衣食を「衣・食植・住」とし、過去に生きた先人たちが作った布を触れるとわかる、未来のわたしたちたちに伝えてくれる、過去に生きて未来に残す生き方。そんな生きる力をたっぷり体に溜め込んでもらえる展示になれたらなあと。

私たち一人一人が、未来のタネをまく役割を担っているくらいの時代に生きているといいますか。そのくらい、教科書に載っちゃうくらいの時代をナマで生きてるからこそ楽しまなきゃ。
劣化ではなく、時がたてばたつほど”良化”していける人間に。

「衣食住」