ご挨拶
本日は、私たちrestaurant eatripとThe Little Shop of Flowersの10周年パーティーにお越しいただき、誠にありがとうございます。
あっという間に10年が経ちました。
この10年を振り返ると、私たちのみならず、みなさんにとっても、日本という国にとっても、世界にとっても、とても濃密な日々だったなぁ、と思います。
これは、歳を重ねると「１年って、あっという間！」と思う感覚とは、また別の話のような気もします。昨今、あらゆる物事が便利になってきたことで、その分、スピードが何倍速にもなっているような……。ちょっと前の30〜40年の発展が、今ではたった10年に凝縮されているのではないかとさえ感じるのです。
そして、私たち二人とも女性！ 思い出そうとしても思い出しきれないほど、心身ともに変化の大きな、濃縮した10年。そしてその延長線上に、性別を超え、人としての豊かな景色へと向かう、人生の道しるべを与えてもらえた10年でもありました。
この場所をお借りした当初は、この場所の木々に土に、そしてこの家屋にただただ惹きつけられた私たち。正解がわからなくとも、日々に忙殺されようとも、季節を知らせる木々があり、風や光が通るこの場所は、無言の力を、私たちにいつもそっと与え、いろいろなことを教えてくれたように思います。
レストランは、場がなければ成立しません。日中日夜、この場で出逢いがあり、そこから生まれるマジカルな時間によって醸された目に見えない“菌”は、間違いなくこの空間に宿り続けていると思います。
花屋は人生の始まりから終わりまで、寄り添い続けるお仕事なのだと気づかせてくれた場所。毎週ここに集まる草花たちと、ここの木々たちとのハーモニーは、“始まりから終わり”までをお手本のように魅せてくれる場所でした。
10年目にあたり、私たちにとって奇跡的な出合いのようにも思える、この場所。そもそも神宮前というエリアにはどんな記憶が刻まれてきたのだろう？と思い、調べてみました。
たくさんの記事を読み漁った中で特に印象的だったのが、2020年に創立100年を迎えた明治神宮が誇る森（杜）の成り立ちでした。端的に言えば、現在、明治神宮の杜があんなにモリモリと、原生林かのように繁茂しているのは、神宮の杜を設計するにあたり集められた林学と造園における第一線の学者たちが描いた “150年後の未来図”だったと。50年後、100年後、その先までを想像し、人の手を加えなくても世代交代を繰り返すことのできる“永遠の杜”をつくるという壮大な計画。そして、全国から樹木が寄贈され、11万人もの青年ボランティアが加わり、当時これに関わった誰もが実際に目にすることのできない150年後の未来にメッセージを残したのです。
決して平和とは言えない時代に今を生きる私たちは、未来にどんなメッセージを残すことができるだろう？ 図らずも、仕事の場として、「家」と「庭」が揃っているこの神宮前の場所に出合い、自然と「食・植」を育む「土」への思いをふくらませてきたこの10年。「食」と「植」に携わる者として、一度の人生と思わずに、何か未来に繋げていく活動を、これから少しずつでもできたらいいのかなぁと、思う日々です。
私たちは、来年2023年の年末で、この場所での営業を終了することになりました。正直なところ、次の構想はまだ決まっていません。
ただ、eatripもThe Little Shop of Flowersも、小さな渦ではありますが、同じ未来を見ていることは確かです。その未来に向かってどう動いていこうか……この10年、私たちを支えてくださったみなさまからアドバイスをいただきながら、一緒に次の10年を紡いでいけたらと思っています。
本日は、ほんとうにありがとうございました！
そして残り１年半弱、どうぞよろしくお願いいたします。
eatrip 野村友里
The Little Shop of Flowers 壱岐ゆかり
2022年9月28日
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